名前の無い物語
差し伸べれた手を
パァンと吉野は弾いた
その瞬間、記憶に思い起こされる
逃げるとき、伊織の手を弾いてしまった…あの瞬間
「っ…ごめん、海。」
1つの記憶を思い出すと
次々と、それは鎖のように繋がって思い起こされていく
止めろ、止めろ…
海達まで、失いたくないんだ…!
「ごめん、本当に…。けど、俺…「立てよ、吉野。」
「えっ?」なんて声を発するより先に
吉野は海によってブッ飛ばされていた
「痛っ!」
「ちょ、海っ!」
「何やってんだよお前!」
さすがに柚歌と空も予想外だったのか
二人は海の肩を引っ張った
けど、そんなのも気にせずに
海は氷で剣を作る
少し離れた所で
吉野は立ち上がりながら口元の血を拭っていた
「…勝負だ、吉野。」
真っ直ぐと
海は剣の切っ先を吉野に向けた
「…海?」
「話してたって埒あかねぇだろ?だったら、シンプルにコレで勝負着けようぜ。」