名前の無い物語
グッと圧されて
吉野の態勢は少し仰け反り気味になった
足さえ凍られていなければ
後ろに飛んで間合いを広げられるのに…!
「お前は今仲間って言ったよな?なら、何にお前は怯えてんだよ?」
「怯えてる…?」剣を受けながら
吉野は海を見上げた
「怯えてるんだろ?俺達も、伊織さんや陽斗さんみたいに鎖邊に殺られるかもって。」
「!?」吉野は目を丸くした
今さっき自分が思い出した事を
何故海が知っているのか
「悪いけど、俺の仲間に『千里眼』の能力者がいるんだ。
ソイツにしてみれば、他人の過去を視るなんて容易い。」
「…能力者。」
そういえば、出逢ったときに海も『能力者』だと言っていた
これが、海達の世界
「だから皆知ってるよ。悪いとも思った。けど、これしか方法は無かったから。」
「…。」吉野は言葉を詰まらせた
その様子を見て、海は更に力を込める。
「だから聞いてんだよ。お前は…俺達を伊織さん達と重ねて見てんだろ?」
「じゃあどうしろって言うんだよっっ!」