名前の無い物語

目の前に立っている少女を
海は愛しそうに見つめる

そんな海に、華も微笑み返した


華には分かっていた

海がまた、どこか遠くへ旅立っていく事に
そして…自分も勝てるかどうか分からない、強い相手と戦わなければならないことに


何も言うまでもなく
二人は、お互いをギュッと抱き締める


「…私は信じてるよ、海のこと。」

抱き締める腕の力を強めて
華はそう言った

「海は必ず帰ってきてくれる…。だから私も、ここに帰って来れるんだよ。」


海がここに帰って来てくれるなら
私の居場所は…きっとここだから

「…必ず、帰るよ。」

少し身体を離して
海は華を見つめた

「待ってろよ、俺を。」





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