名前の無い物語


「海…。」

少しだけ切なそうな海の背中を見つめて
柚歌は昔の事を思い出した

空が世界に飲み込まれて行くときに似てる
精一杯強がりながら…本当は、自分も一緒に行きたい筈なのに

何故か離れていった
大好きな温もり


「…。」

チラリ、と柚歌は微かに隣に立っている空を見上げる


だけど私達は、こうしてもう一度出逢うことが出来た
信じて、諦めきれなかった…約束を果たせた

だからきっと

海もあの子の約束も…必ず叶う


「海。」

stayの声に海は振り返る
そこには、もう強い瞳を浮かべていた


「分かってる。」

歩き始める海
それに続いて、柚歌と空も後を追った


「…強いよな、海は。」

ポツリとそれだけ呟いて
吉野も後を追いかけた






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