名前の無い物語
空の声に吉野と柚歌も視線を向ける
支えられた海は、苦しそうに顔を歪めていた
「海!?」
「大丈夫か!?」
さっきの衝撃でどこか打ったのだろうか?
そう思ったが、目立った外傷が無い
代わりに、額に浮かんだ大量の汗が見えた
「もしかして…能力を使いすぎたの?」
「いや…そんな筈は…。」
それは無い
あれくらいの消費、余裕な筈だ
だけど、いきなりの急停止に俺の能力は強制解除された
恐らく、その強制解除の負担がきてるんだ
「…とりあえず、ちょっと休…ーーキュイン
吉野の言葉を遮って
耳に届く機械音
その音は然り気無く、少しずつ大きくなっている
「何…この音…。」
「何かが近づいてきてる…?」
その音は極限に大きくなると、ドアの側で音が止まる
三人が、息を呑んだ瞬間
勝手に扉が開いた