名前の無い物語

ゆっくりと
吉野は海の手を払った

「陽斗と伊織は…命を懸けて世界を護ってくれた。友達が護ってくれた世界を、俺の手で壊すわけにはいかない。

それに…俺も命を懸けて、大切な友達を護りたいんだ。」

命を懸けて俺を逃がしてくれた陽斗と伊織
世界に…未来を与えてくれた二人

だから俺も
皆を護るために…この命を使いたい



「それに、俺の心は…黒蘭にも、博士にも与えるつもりは無い。だから、俺の最期は…友達である皆に終わらせて欲しいんだ。」


大切な…大切な友達だから、三人に頼みたい

皆の手で消されるのなら

本望だ


最後だけは、三人の目を見て吉野は告げた

また広がる沈黙のなか
柚歌は一歩足を進めると

優しく吉野を抱き締めた


「…柚、歌?」


「…バカ。」











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