名前の無い物語
ギュッ、と柚歌は腕の力を込める
出逢ったあの時から
ずっとずっと一緒に旅をしてきた仲間
あの時は…彼には心が無いのではないかと不安だった
どこか距離を置かれている…そんな関係
そんな彼が
ここまで世界を想い、自分の意思で決めたこと
悲しい反面…嬉しい気持ちが溢れてくる
「…ありがとう、吉野。」
こんなにも辛い決断を
こんなにも大切な決断をするのに
きっと吉野は悩んだ筈だから…
海と空も、吉野の頭を撫でたり、二人を見守っていた
「…1つだけ、約束して欲しい。」
溢れそうになる涙を堪えながら
吉野はある『約束』を口にしたーー