名前の無い物語
+追憶
光が消えて見えた景色は、まるで夜のように暗い世界
暗いというより…色を失った、モノクロの世界
だけど、吉野の瞳には
見覚えのある花畑が写っていた
「…着いた。」
色を失っていても分かる
ここは…約束の華が咲いている場所
俺と伊織と陽斗が…大好きだった場所
「あの扉、本当にこの世界と繋がってたのね。」
「あぁ…まぁ半信半疑だったけど。」
柚歌と空は苦笑いを浮かべながら辺りを見渡した
色んな決意を胸に秘めて
扉を発動させた吉野達
光が包み込んだかと思ったら
ついに…吉野の世界に辿り着いていた
「吉野、どこに鎖邊がいるか分かるか?」
切なそうに華を手に取る吉野に
海はそう聞いた
「…聖地には、修練場の奥から行ける筈だ。
この丘を下れば、修練場に着く。」
陽斗と伊織に渡せなかった花束
せめて…謝りたかったな
「…案内するよ。」
華から手を離して
吉野は立ち上がった