名前の無い物語
吉野を先頭に、四人は足を進めていた
時おり、吉野は辺りに視線を送る
見慣れた光景
その景色が全て…色を失ったモノクロになっている
たまに見る住人も、まるで石化したようにピクリとも動かなかった
これが、世界を封印するということ
この世界の『時間』は…止まったままなんだ
「あれだ。」
広い広場の向こう側に
懐かしい…巨大な建物が目に入る
あれが、ソードマスターを育てていた修練場
吉野と陽斗と伊織が…出逢った場所
「待って、誰か倒れてるわ。」
広場に入ろうとした瞬間
そこに転がっている…三人の姿
その姿を確認した瞬間
吉野の足は止まった
「陽斗…伊織…師範…!」