名前の無い物語
修練場の奥の奥
進めば進むほど、ボロボロになっている建物
ここで…師範と陽斗が、鎖邊と対峙していたんだ
そう思うと、吉野は拳をギュッと強く握った
命を懸けて繋いでくれた、みんなの為に
…
「…ここだ。」
最奥のフロア
そこた佇んでいる祭壇の中心には
禍々しい色の光が…静かに存在していた
この世界で、自分達以外で唯一色がついているもの
アレこそが、聖地へと続いている扉…
「…あの先に、博士が…。」
俺を待ってるんだ
吉野の顔つきが変わる
肩には少し力が入っていた
「…焦るな、吉野。」
ポン、と海は吉野の肩を叩く
「海…?」
「力みすぎ。そんなんじゃ、周りが見えなくなってあっという間に殺られるぜ?」