名前の無い物語
キィン、と氷の剣が止められる
チッと舌打ちを吐いて、海はそのまま左手を鎖邊に向ける
「‘絶空’!」
左手から放たれた技
剣を受け止めていた鎖邊にとって…近距離でくらった筈だ
「‘魂のオーケストラ’!」
追い討ちをかけるように、柚歌の音が煙の中の鎖邊に襲いかかる
「海、どけっ!」
咄嗟の声に、海は後ろに飛んだ
瞬間、背後には空の姿が現れる
「…’花火‘っ!」
右手で作った協力な火花
それを、鎖邊に打ち込んだ
ドォンと激しい爆音が起こる
柚歌と海は腕で煙を防いだ
「っ…上手くいったか?」
「わからない…これで少しでも傷を負わせれたらいいんだけど…。」
始まってからどれくらい時間が経ったのか
今まで一度も…三人の攻撃が鎖邊に入った事は一度も無かった
だけど尚、師範である夏村さえ敵わなかった相手とまだ戦えているのは
恐らく…三人が持つ能力は鎖邊にとって未知なる力だから
ソードマスターのような、自身が知っている力ではなく
他の世界の…未知の能力だから
だから、三人は未だに鎖邊と対峙出来ている
「…アソコ!」
柚歌の言葉に、海は再び煙の中に神経を集中させた
煙が晴れた先には
空の攻撃を受け止めている…鎖邊の姿があった