名前の無い物語
一瞬感じた殺気
直後、強力な衝撃波が氷の壁に激突した
間一髪、海が氷を張ったのだ
「っ…鎖邊…!」
ビリビリと感じる衝撃に耐えながら
海は前に視線を移す
ユラリと動いた黒い影
煙が張れると、肩から血を流した鎖邊の姿が現れた
…鎖邊に、攻撃が届いてる…!
「油断したのぅ。さっきの力…侮れん力じゃ。
まぁ、術者本人にも相当なダメージがあるようだが…。」
鎖邊の視線は倒れている空に向かう
その視線を、柚歌は強く睨み付けた
「柚歌。」
凛とした声に、柚歌は顔を上げる
「空のこと、頼むな?」
「海…?」
理解する間でもなく
海はもう一度氷の剣を作ると、鎖邊に向かっていった
「海っ!」
まさか…鎖邊に一人で相手を?
だけど、空の"調律"を止める訳にはいかない
…今は、"調律"に集中しなければ…
柚歌はもう一度、空の方に神経を集中した
「っ…柚、歌。」