名前の無い物語
「!空、大丈夫?」
意識が安定してきたのか
空の瞳は柚歌を捉えた
「何で…何で"破壊"の力を使ったの…?その力だけは上手く操れないって言ってたのに…。」
「…俺達が鎖邊と戦えてるのは、俺達の力がアイツにとって未知の力だからだ。アイツに耐性が出来れば俺達の勝ちは無くなる…つまり、長期戦は不利…。
だから、すぐに決着を着ける必要があった。」
だから
だから、空は破壊の力を…?
「けどやっぱ一瞬躊躇ったかな…?最大限に解放出来れば、アイツを倒せると思ったんだけど…。」
迷ってしまった
倒さなければならない敵だったのに
この力で殺すことを、恐れてしまった…
「…バカ!何考えてるの!!」
空の頬に水滴が落ちる
それは、柚歌の大粒の涙だった
「最大限に解放なんてしてたら…本当に死んでたわよ!ふざけないで…吉野との『約束』、忘れたの!?」
柚歌の言葉に
空も吉野との『約束』を思い出した
扉を潜る前
自分を消せ、と想いを告げた吉野
そんな状況にはさせないと…誓ったあの時
ーー1つだけ、約束して欲しいーー
吉野が告げた、ある『約束』
ーー絶対に…また四人で星を観ようーー