名前の無い物語

「!空、大丈夫?」

意識が安定してきたのか
空の瞳は柚歌を捉えた


「何で…何で"破壊"の力を使ったの…?その力だけは上手く操れないって言ってたのに…。」

「…俺達が鎖邊と戦えてるのは、俺達の力がアイツにとって未知の力だからだ。アイツに耐性が出来れば俺達の勝ちは無くなる…つまり、長期戦は不利…。

だから、すぐに決着を着ける必要があった。」


だから


だから、空は破壊の力を…?


「けどやっぱ一瞬躊躇ったかな…?最大限に解放出来れば、アイツを倒せると思ったんだけど…。」


迷ってしまった

倒さなければならない敵だったのに


この力で殺すことを、恐れてしまった…


「…バカ!何考えてるの!!」

空の頬に水滴が落ちる
それは、柚歌の大粒の涙だった


「最大限に解放なんてしてたら…本当に死んでたわよ!ふざけないで…吉野との『約束』、忘れたの!?」


柚歌の言葉に
空も吉野との『約束』を思い出した


扉を潜る前

自分を消せ、と想いを告げた吉野
そんな状況にはさせないと…誓ったあの時

ーー1つだけ、約束して欲しいーー



吉野が告げた、ある『約束』


ーー絶対に…また四人で星を観ようーー










< 548 / 595 >

この作品をシェア

pagetop