名前の無い物語
「ぐっ!」
弾かれた衝撃に耐えながら
黒蘭は顔を歪めた
反撃態勢に入るまでもなく
また黒蘭に向かう…光の剣
チッと舌打ちを吐いて、黒蘭はその攻撃も何とか避ける
同時に左手で作った闇の球を、近距離で吉野に放った
「っ!」咄嗟に反応した吉野
両の2本の剣で、簡単に相殺した
その衝撃で起こった煙に合わせ、黒蘭は一度間合いをとる
状況は変わっていた
吉野の手に…もう一本の剣が現れた、あの時から…
チッ…何だあの剣は
俺はアイツと『同じ』筈
そう…俺はアイツだ
実力も、戦い方も全て同じ筈なのに
何故…アイツの下に剣が『2本』もある?
何なんだよ、あれは…
ーーみんなが命を張って作り上げた平和を、俺達の勝手で壊してたまるかよ!ーー
黒蘭の頭に浮かんできたのは
あの時…吉野が言った言葉
…『友達』だと?
「チッ…くだらねぇ。」
ワナワナと怒りで黒蘭の手が震える
くだらない
そんなもの…
「俺の手で跡形もなく破壊してやる…!」
瞬間
巨大な闇が黒蘭の周りに纏う
「…!」吉野は一瞬冷や汗を流す
黒蘭から感じる闇の気配は
さっきとは比べ物にならないくらいに高まった
…黒蘭も勝負を懸けてきた
俺も…負けるわけにはいかない…!