名前の無い物語
終わりは突然訪れた
意識が起こったことを理解した時には
吉野の剣は…振り下ろされていた
理解する、それより先に
手に残る僅かな感触が…悟らせてくれた
吉野の数歩後ろには
剣を構えた黒蘭
けれど、その黒い剣は
シャァンと音を立て…硝子のように砕けていく
「…ありえねぇ。」
俺が、負けるなんて…
そう言う前に
黒蘭は膝を着いて倒れていく
剣と同じように
倒れた黒蘭の身体は…ガラスのように砕けて地面の中に消えていった
それを背中で感じた吉野
…勝った
そう、喜びを感じた時だった
シャァンと、黒蘭の剣と同じように
吉野の剣も砕けていく
ーーお前の心もまた砕けるぞ?ーー
黒蘭のそんな言葉が頭に浮かんだ
別に後悔はしていない
これは…俺が望んだことだから