名前の無い物語

切られた傷を押さえながら
柚歌は走り出す


「空…海っ!」

直ぐ様駆け寄って
二人に声をかける

見たところ…目立った外傷は無い

技の衝撃で気を失ってるのか…?

そう思っていても
嫌な予感は止まらない

もし

もし…このまま目を覚まさなかったら…!?

ジワリ、と涙が溢れる
視界が歪んだ…その瞬間


「っ…ゲホッ!」

「ぅ…。」

「!?」柚歌が理解するより前に
空と海はゆっくり起き上がる


「いってぇ…。」

「技の反動半端ねぇな…クソ。」

頭を抑えながら起き上がった二人
涙を流している柚歌を見た瞬間、目を丸くした

「は?柚歌!?」

「何泣いてんだお前!?」


無事だと悟った瞬間
柚歌の涙は止まること無く零れていく


「…君たちのせいだよ、バカっ!! 」


泣きながらそう叫ぶ柚歌
まだ止まらない涙に

空と海は戸惑いを隠せなかった









< 565 / 595 >

この作品をシェア

pagetop