名前の無い物語
切られた傷を押さえながら
柚歌は走り出す
「空…海っ!」
直ぐ様駆け寄って
二人に声をかける
見たところ…目立った外傷は無い
技の衝撃で気を失ってるのか…?
そう思っていても
嫌な予感は止まらない
もし
もし…このまま目を覚まさなかったら…!?
ジワリ、と涙が溢れる
視界が歪んだ…その瞬間
「っ…ゲホッ!」
「ぅ…。」
「!?」柚歌が理解するより前に
空と海はゆっくり起き上がる
「いってぇ…。」
「技の反動半端ねぇな…クソ。」
頭を抑えながら起き上がった二人
涙を流している柚歌を見た瞬間、目を丸くした
「は?柚歌!?」
「何泣いてんだお前!?」
無事だと悟った瞬間
柚歌の涙は止まること無く零れていく
「…君たちのせいだよ、バカっ!! 」
泣きながらそう叫ぶ柚歌
まだ止まらない涙に
空と海は戸惑いを隠せなかった