名前の無い物語
ジャリ、と音を鳴らすローファー
見覚えのある制服
吹く風に揺らされる…長い綺麗な髪
「あの制服…!」
三人は言葉が出なかった
あの制服は…吉野の高校のもの
ということは、アイツは吉野の学校の生徒…?
そういう結論になるが、そう簡単には信じられない
敵だという可能性も捨てられないし
鎖邊の刺客かもしれない
咄嗟に、三人は構えた
ジャリ、と少女は彼らの近くで立ち止まる
「…随分な挨拶ですね。」
海達の行動に、少女は首を傾げた
「安心してください。私は敵ではありません。」
「…そう言われて、簡単に信じるかよ。」
キッ、と少女を睨む海
こんな所に来れるなんて…相当怪しい人物
何にせよ…只者では無いことは確か
少女はウーンと頭を悩ませる
少し考えたかと思えば
「あぁ成る程。」と一人で納得した
「そういえば、私が接触したのは滝川君のみで…あなた方とは初めてでしたね。」
吉野と接触…?
あの世界で、吉野はコイツと接触してたっていうのか?
「失礼致しました。では、改めて。」
スッ、と少女は片手を胸に
片足を後ろに下げ
頭を軽く下げた
「初めまして…私は柳千裕。」