名前の無い物語
「心を、壊した…?」空の声は震えていた
柚歌と海も目を丸くする
「じゃあやっぱり、吉野はまだ生きてんだよな!?」
空の言葉に千裕は「ハイ。」と頷いた
「滝川君は死んではいません。ただ心を無くし、眠っているだけです。」
「何で…黒蘭にやられたのか…!?」
アイツしかいない
チッ、と空は悔しそうに舌打ちを吐いた
「…あなた方は、黒蘭と闘ってはいないのですか?」
「いや…黒蘭は吉野をどこかへ連れ去ったんだ。だから俺達は吉野に任せて、鎖邊を…。」
海の言葉に、「成る程。」と千裕は頷いた
「なぁ、吉野はいつ目を覚ますんだよ?」
「…今の滝川君は、目を醒ましませんよ。」
千裕の言葉に、三人は一瞬思考が停止した
何を言われているのか
全く理解出来なかった
「恐らく滝川君は、一度黒蘭に飲み込まれたのでしょう。光と闇は1つになっていた。別れた2つの心は、再び『1つ』に戻っていたのです。
その状態で黒蘭を倒すということは、自身の心に皹をいれると同じこと。それによって、滝川君の心は…。」
黒蘭は、元は吉野の闇の部分
吉野の片割れなのだ
彼は…自分の一部を殺したも同然
「いくら滝川君でも、再び心を再生させるのは不可能。
つまり、彼は心を無くした人形同然。永遠に、眠り続けるでしょう。」