名前の無い物語
沈黙が走った
「…は?」あまりの答えに
海はすぐには理解出来なかった
「ですから、私が滝川君を救うと言ったのです。」
いやそれは分かった
「お前…治し方今見つけたんじゃなかったのか?」
「ハイ、今ハッキリと。」
いやいやいやいや
じゃあ最初っから救っとけよ
何なんだこの茶番劇
ハァ、と海はため息を吐いた
「ってそうじゃなくて!お前一人の力で…心って戻るものなのか?」
「別に私は奇跡を起こそうなどと考えてはいません。だたの『トレード』です。」
…『トレード』?
意味が分からず、三人は首を傾げる
そんな様子に、千裕はクスッと笑った
「まぁまぁ。とりあえず私に任せて、少し離れてください。
巻き込まれたら元も子も無いですので。」
そう言われて
仕方なく言う通りにする三人
数歩離れたことを確認すると
千裕と吉野に淡い光が纏う
これで、本当に吉野が救えるのか…?
その光景を見ながら
海は考えを巡らせた
まぁアイツも長老会の差し金だ
出来なくもないのかもしれないが…
ーーただの『トレード』ですーー
…『トレード』
tradeって…交換?
何と?
「っ…まさか…!」
海の頭に浮かんだ、ある考え
アイツ…!
「止めろっ!」