名前の無い物語
気づいた時には
三人の足元に、小さな光が纏っていた
「は!?」
「何これ…!」
「あなた方の役目は終わりました。ですので、安全な場所に転送します。」
クルリと振り返った千裕の手には
1つのルービックキューブ
「何言ってんだよ…!役目は終わった?俺達はまだやれる!お前が犠牲にならなくても、別の方法「あなた方はもう戦えない。もう能力を放つことは不可能なのでは?」
「っ…!」海は言葉が詰まった
本当の所
もう能力は限界に達していた
「安心してください。滝川君もすぐに、あなた方の下にお送りします。」
ニコッと千裕は笑った
その笑顔に、海は心が痛んだ
「ですからそんなに気にしないでください。私は藤澤の手で作られた存在。本来ここにはいないイレギュラーなもの。役割を果たす為だけに生まれた…ただの人形なんですから。」
海は首を横に振った
違う
全然違う…!
「お前も…『人』なんだろ?」
海のその言葉に
千裕は嬉しそうに微笑んだ
「…あなた方にそう言って頂けただけで、私は満足です。」
スッと千裕の手がルービックキューブに伸びる
「っ…止めろ!」海はガン、と壁を叩く
空と柚歌も走り出した
「…ありがとう。」
その言葉が聞こえた瞬間
カチッとルービックキューブは完成したーー