名前の無い物語
長い長い廊下を歩いていた
その間に…会話は何一つ無かった
もうすぐ皆とお別れ
だけど…不思議と足は止まらなかった
ようやく、目的地が見えてくる
目の前には…4つの小さな扉があった
この先にポッドがある、四人はそう感じ取った
「…着いたな。」
最初に言葉を発したのは
海だった
「何だか…長かったようで、短かったよね。」
「あぁ…。覚えてるか?俺達が、出会った時のこと。」
勿論、覚えている
目が覚めたら森の中
何が起こっているか分からない…そんな状況
スプーンが指したその先に
海と柚歌がいた…
「柚月の世界の校長に言われた時、柚歌全力で拒否ってたよな。」
「そうだったわね。けど、今は旅をして後悔はしていないわ。」
この決断は間違ってなかった
きっと、あのまま世界に帰っていたら
空には会えなかった
「吉野は柚月と一緒に無茶するし。」
「ハハッ…。」
柚月と一緒に黙ってお屋敷に行って
あとで皆に怒られたっけ?
「そういう海こそ、祐希達の世界で喧嘩ばっかしてたくせに。」
「…クセなんだよ。」
喧嘩売られては買って
楽しく暴れる
祐希達は…そういう奴等だった
「その後だったよな、柚歌の世界に行ったの。」
「えぇ…。寧々音も相変わらずだったしね。」
チラリ、と柚歌は空の方を見た
二年前のあの時も
寧々音は銃を片手に突然現れ、空と柚歌をサポートした
本当に彼女は何者なのだろう…?
「で、吉野の世界に着いたんだよな?」
「吉野がゴールしたの…まだ昨日のように思えるわ。」
クラスメートと分かち合って
アンカーを走りきった
あの喜びは…きっと忘れられない
「それから空に出会って、海の世界で天使に会って…ここからは早かったよね。」
まるで坂道を下りるように
怒濤に展開していった
「あ、でもあれは傑作だよな。海が七菜と華を間違えたやつ。」
「だから、間違えてねぇって。」
いや本当はかなり際どかったけど
すんげぇ似てたよなぁ…華と
「…本当、色んなことがあったよな。」