名前の無い物語








「ここが私達の部屋です。」



柚歌が案内された場所は、桜と柚月の部屋だった
玄関に、広々としたリビング
そこから見える二つの扉の先が、おそらく二人の部屋だろう


「すごい…学生寮とは思えないわ。」



「そりゃね、この学校すんごい寄付金奪ってるから…。」



柚月の耳打ちに、柚歌は自然と笑みを溢した
とりあえず、テーブルの近くに腰かける


あれから、柚月達の部屋に案内してもらう事になって
暫く、考える事に決めた

これからどうするのか
私達が、何をすべきなのか

ううん、やるべき事なんて…もう分かってるのに…



「どうしたの?思いつめて。」



「えっ?」覗き込んで来た柚月に、柚歌は一瞬動揺した
視線の先には、少し困ったような顔の柚月



「校長に何言われたか知らないけどさ、気にしない方がいいよ?
あの人いつも突然だから。」



「ハハハ…。」



確かに突然だ
まぁ、全てを知っていた奴は身近にもいたのだけれど…


「ハイ、コーヒーです。」





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