名前の無い物語
別れてから吉野の姿が見えない
「まだ部屋にいるのかしら?」
確か、俺が部屋から出ていく時は窓から外を見てたんだ
なら部屋に大人しくいるのか?
「…何か、変な感じ。」
フフッ、と柚歌は笑った
海はその光景を見て、首を傾げた
「何笑ってんだよ?」
「だって…私達さっき出会ったばっかなのにさ。まるで前から友達だったみたい。」
柚歌の言葉
海はポカンと呆ける
「…確かに。」
ついさっきまで知らない奴で
しかも、違う世界から来た奴等だったのに
「もう、友達だよな…俺達。」
これからどうしようかとか関係ない
俺達はもう、他人じゃないんだ
「…友達、か。」
そう呟いた柚歌の表情を
夕陽が明るく照らした