名前の無い物語
耳に届いた新しい声
二人は振り返る
「「寧々音!?」」
背が低く、フワリとした少女ーー寧々音は駆け足で二人に寄ってくる
「柚歌ちゃん、ラブレター!?」
「あ…いや、これは…。」
んー?と覗き込んでくる寧々音から柚歌は手紙を遠ざける
寧々音は首を傾げた
「ねぇ、見せて見せてぇ!」
「ダメだよ!っていうか、ラブレターじゃないから!」
ぶーっ、と拗ねる寧々音に柚歌は溜め息を吐く
「にしても、ベタな渡し方するよな。本人に直接渡せばいいのに。」
「もう、彰も黙っててよ!」
柚歌は手紙を鞄に突っ込み、教室まで走り出した