七川学園裁判部!



奈々のバイト先に駆け付けた時には、すでにパトカーが到着していて、立入禁止の黄色いテープがはり巡らされていた。

関係者でもない俺は野次馬に混じって様子を伺う事しかできなかった。

奈々の携帯にも何度か電話をかけてみたが奈々は携帯に出る事はなく、留守番電話に切り替わった。

親父に連絡を取り、奈々の状況を伝えると短く

「わかった。お前は先に帰っていろ」

とだけ言い、俺の返事を聞く前に電話が切れた。

親父が動けば奈々が変な目に会うことはないだろう。

しかし、おとなしく家に帰ったところで落ち着かないだけだ。

奈々のバイト先の近くにある喫茶店に入り、そこにいることを奈々の留守電に入れた。ここなら従業員用の入り口も確認できる。

コーヒーを頼み、一口すする。

どうも奈々の電話を受けた後から気が張っていたらしい。少しだけ肩の力が抜けた。外が夕焼けに赤く染まり始めていたのにもようやく気がつくぐらいに。

運転手の下條から着信が入ったどうも奈々のバイト先の件はすでに親父から家の方にも連絡が入っていたらしい。

俺は下條に自分の居場所を伝える。下條は後10分ほどでこちらに着くという。

用件を終えて、電話を置く。

下條が到着する間に、野次馬はそれぞれの日常に戻り始めた。

「お待たせいたしました。奈々さまから連絡はございましたか?」

「まだだよ。座りなよ」

「さようですか。失礼致します」

下條は俺の前に座った。

下條は、俺が小さい頃から俺の運転手として川島家へ仕えている。

しかし、その容貌はどこぞの御曹司にも引けを取らない。端正という言葉がしっくりくる。
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