Bloody×Lovers

「どうしても、答えられないと?」


男性はいぶかしげに尋ねる。


私はコクリとうなずいた。


「・・・無理に聞くつもりはないが、飛び降りるならもっといい場所があるだろう?」


私は黙ったままだった。


「・・・お前、名前は?」


「ぇ・・・」


名前を聞かれている、という事に戸惑っているのではない。


名前を言えば、家に帰されるかもしれない。


帰ろうと思っていたけれど、時間によっては母親に会うことになってしまう。


それだけは、嫌だ。


「おい、聞いているのか?」


私は、飛び降りて消えるはずだったのに・・・


「おいっ!!」


ビクリ、と体を揺らす。


気づかなかった。


「名前は?」


「・・・知りません」


これしか答えが、出なかった。


「どうゆう意味だ?」


・・・これは、怒らせた?


「私は飛び降りて、その時死んだんです。あなたが助けたとしても、本当の名前をもった私はもういないんです」


「・・・そういうことか」


男性は目を細めて私を見る。


「なら、今殺されても本望ということか?」


驚かされる発言をした。



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