Bloody×Lovers
「着替えを取ってきてやるから少し待っていろ」と男性は言って私から離れていった。
不思議な人・・・。
私は恐る恐る首筋に触れた。
穴のような形状をした傷が、2つ。
ヴァンパイアは、血で飢えを満たす。
「あなたと、一緒ね・・・」
ポツリ、と今はもう会えない人に向かって呟いた。
「誰に向かって話している?」
耳元で、声がした。
「きゃっ───」
「いい度胸だ」
ベッドに、無理矢理倒された。
「さて・・・」
私から離れる前は笑っていたのに、今は無表情な男性の顔。
「今完全に喰らってもいいのだが、それではつまらないからな」
穴のような形状をした傷に、男性の指が触れる。
「・・・名前は、あくまでも知らないというのだな?」
「知りません・・・」
私を見下げながら話す男性の瞳は、とても冷ややかだ。
「なら、ここにいるときだけでいい。名をくれてやる」
「いりません」
「お前が決めることではない」
私に決定権はない、ということだ。
「───紗姫」
「さ、き・・・?」
私の、名前。
「異論でもあるのか?」
「・・・ないです」
本当の名前とは違うけど、綺麗な響きを持った名前だった。