Bloody×Lovers

「・・・紗姫」


「───はい」


唐突に、名前を呼ばれた。


「なぜお前は魔術に心当たりがある?」


「それは・・・」


「答えられないのか?」


匡様は私を問い詰める。


でも───


「私の血を取り込んだのなら、見えるんじゃないんですか?」


記憶は魂に焼き付けられる。


血を取り込むというのは、魂の一部を取り込むのと同じこと。


そう、教えられた。


「お前、やけに詳しいな」


「教えられましたから・・・」


ちらりと見えた匡様の瞳が、とても冷たく感じた。


「興味があるのか?」


「そういうわけじゃ、ないですけど・・・」


私はただ俯くしかなかった。


私達はまだ手を取り合ったまま止まっている。


「一度だけ聞こう」


怒気を含んだ、低い声。


「誰に教わった?」


・・・言えない。


誰にも言わないと、約束してしまったから。


「言えません・・・」


「なぜ?」


「誰にも言わないと、約束したから・・・」


刹那、匡様の手が傷跡のないほうの、左の首筋に当たる。


『ブチッ』


「あっ・・・!!」


匡様の爪が首筋に食い込んで、赤い蜜があふれ出す。


『ギッ・・・ギリッ』


私が答えるまで、傷を深くしていくつもりなんだろう。


でも、でも・・・


《美音、どうしたの?》


あの人の声が、聞こえた気がした。



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