Bloody×Lovers
「い、や・・・」
匡様が、焦れたように傷を深める手を進める。
痛みに耐えられなくなり、目を瞑る。
でも、匡様は私から手を離した。
『ピチャ・・・』
首筋の痛みが、消えた。
ザラリとしたものが、傷口に執拗に宛がわれる。
《泣きたいなら、泣けばいいのに》
泣けないよ、こんな事で・・・。
《美音って変に感情を隠すよね》
そうだっけ・・・?
『ゴクッ』
耳元で聞こえた、匡様が蜜を飲み込む音。
不意に、匡様の顔が首筋から離れた。
血色に底光りする瞳。
ぐたりとする身体を、匡様が支えてくれる。
膝裏を抱えられて、いわゆる、お姫様抱っこという状態になる。
そのまま、またベッドに寝かせられた。
「狼族か・・・」
その時にはもう、私を見る瞳は元の色に戻っていた。
「しかも、男か。マーキングされていないのだな」
”マーキング”・・・。
あの人も、しようとしてたっけ。
結局は、しなかったけど、最後の最後まで悩んでいた気がする。
「名は・・・隼騎と言っていたか?」
そう───
いつも、私に気遣ってくれた優しい狼。
いや、半狼、かな?
匡様と同じ人外の者・・・。
そして、1番最初に私の血を舐めた。