Bloody×Lovers

「い、や・・・」


匡様が、焦れたように傷を深める手を進める。


痛みに耐えられなくなり、目を瞑る。


でも、匡様は私から手を離した。


『ピチャ・・・』


首筋の痛みが、消えた。


ザラリとしたものが、傷口に執拗に宛がわれる。


《泣きたいなら、泣けばいいのに》


泣けないよ、こんな事で・・・。


《美音って変に感情を隠すよね》


そうだっけ・・・?


『ゴクッ』


耳元で聞こえた、匡様が蜜を飲み込む音。


不意に、匡様の顔が首筋から離れた。


血色に底光りする瞳。


ぐたりとする身体を、匡様が支えてくれる。


膝裏を抱えられて、いわゆる、お姫様抱っこという状態になる。


そのまま、またベッドに寝かせられた。


「狼族か・・・」


その時にはもう、私を見る瞳は元の色に戻っていた。


「しかも、男か。マーキングされていないのだな」


”マーキング”・・・。


あの人も、しようとしてたっけ。


結局は、しなかったけど、最後の最後まで悩んでいた気がする。


「名は・・・隼騎と言っていたか?」


そう───


いつも、私に気遣ってくれた優しい狼。


いや、半狼、かな?


匡様と同じ人外の者・・・。


そして、1番最初に私の血を舐めた。





< 8 / 26 >

この作品をシェア

pagetop