足並み揃って



一瞬時間が止まった。



鬼頭が発した
簡単な言葉の意味は
突然すぎて俺には
理解できなかった




『お前冗談がきついぞ』


俺の中から返すことができた
精いっぱいの言葉だった



しかし
鬼頭は俺の目をまっすぐみて



鬼頭「冗談じゃない。本気でいっている」



と答えた。







...わかってる。
冗談じゃないことぐらい


鬼頭の目が笑ってない事もわかってた。
それに芸人がその"辞める"なんてフレーズを簡単に出さないこともわかっていた

だから鬼頭がその言葉を口にした時
お前の言葉を信じたくなかったんだ。





…。






数秒3人は黙っていた





その場の空気は淀んでいた。

タバコのせいだったかもしれない。



そしてたまらず先に
口を開いたのは俺だった




村田『理由は?』




鬼頭の理由はこうだった
12年間芸人をやってきたが
まったく売れず劇場出番もままならない
それにつけ加え唯一の希望だった
大きな漫才大会が去年終わってしまい
何を目指していけば分からなくなったという
ならば30歳ならまだ間に合うからと
いって芸人を辞めるということだった







...ふざけるな。



俺は大声で
『ふざけんな!なんだよそれ!
これからまた新しい大きな大会が
始まるかもしれねぇし、希望がねえだと?
ならなんでお前は12年間も芸人やってきたんだよ!』



俺は鬼頭のあまりにも
単純な理由に腹がたった。


希望が無えから芸人をやめる?



笑わせるな
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