足並み揃って


柳兄さんは俺の7年先輩だ。

大きな特番で出演を博して以来
劇場で埋もれてた実力が
表舞台で芽を咲かせ
テレビでもよく見るお茶の間の
有名人になった


そんな人だが後輩思いで
かならず月に1度はこんな俺らを誘って
飲みにつれてってくれる
羽振りも金遣いもよく
身のまわりの事も援助してもらっている


俺は柳兄さんに対して
優しいという感情よりは
この人こそ芸人なんだなぁと感じている




そんなこんなで
あのケンカのミニコントに
飽きてきた俺らはそのノリに
終止符を打ってまた飲みだした



『そういや噂でききましたが
兄さん深夜にMC番組もつんですってね!!
おめでとうございます!!』


「そやねん。そやねん。やっとや。
やっ...とここまで這い上がったわ」


「おめでとうございます!!」


柳さんは芸歴19年にして
やっと冠番組をもつことができた。
俺が長年慕ってきてきた先輩の中では
一番の出世頭だった。



『さすが兄さんすね!
ずっとそんな兄さんに慕ってきて
その背中みれてこれたことが嬉しいっすわ』

「ほんまそうですわ!」


「ありがとうなぁ!」

そう俺らはおだてながらながら
兄さんは嬉しそうに酒を飲んだ。

楽しい雰囲気のなか


「柳さん僕らもその番組に
出させてくださいよ!」


突然後輩はデリカシーのない発言をした
酔いが回っている俺だったが
本気で腹が立ったからすぐに注意をした。

「やめろ。中井。」


後輩は俺の目が本気なのを感じて
すぐに兄さんに謝った。



「おいおい。気にせんでええぞ。

お前にチャンス与えてやりたいが
あと一歩なぁ...
ごめんなぁMCなのに力になってやれんで」

その言葉に俺は間もおかず


『いいんすよ!自分で勝ち取りたいですし
芸人になって酸いも甘いも経験して
簡単に売れたら嫌じゃないですか(笑)
12年やってるプライドがありますから笑』

と答えた。
そして兄さんの返した言葉も


「そうかぁ...」


の一言だけだった。



そして食って飲んでしゃべってを
繰り返してるうちに
いつの間にか時間は深くなっていた。
いい頃合いだったのでお開きになり


「今日は楽しかったわ
ほな、また飲もうな!」


と言って柳兄さんの車を見送り
そこで後輩の中井とも別れた


< 7 / 33 >

この作品をシェア

pagetop