ライオン岬
 まるで腸(ちょう)のような岬の山道をけんめいにかけ上がってゆく4台の自転車。勾配(こうばい)がきつくなったので、自転車をおりて押しながら上る。ぼくの右にはユーイチ。そのすぐうしろに2人の弟。
 山はだの野生の赤いツバキがぼくらを見送った。

 それからもけわしい山道はつづいた。いつまでたっても坂はゆるくならなかった。

 ほんとうに岬にむかって進んでるんだろうか……

 ぼくは自転車を押しながら、心の中で問いかける。
 
 なんだか同じところをくるくるとまわっているだけのようだ……

 春先でも強い日ざしに肌(はだ)がうっすらと汗(あせ)ばむのがわかる。さっきから足首が少し痛(いた)み、こめかみの血かんが脈(みゃく)を打つ。 
 山道の両側は木々が枝をのばしてトンネルをつくり、気まぐれに向きを変えて、行く手にのびる道のほかには何も見えない。前に、遠足で来た時のことを何か思い出せないかと、かすんでしまった記憶をたぐりよせてみるが、何も思い出せない。ぼくは少しあせりはじめた。 
 とつぜん、目の前に急なヘアピンカーブが見えた。カーブのところに自動車の待避所(たいひじょ)が見える。

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