ライオン岬

 こんなカーブあったかな?

 そう思いながらも、ぼくはすぐ横で自転車を押しているユーイチを見た。昔の遠足で、いっしょにならんで長い坂道を歩いたことだけは思い出す。
 ユーイチはどう思っているのだろう。
「あそこで少し休もうよ」
 ぼくは、待避所を指さして言った。

待避所で自転車を止めて、リュックから地図と磁石を取り出す。てのひらに磁石を乗せ、木々のトンネルの中でレールのように目の前にのびている、ゆるやかな上り坂にむかってさしのべる。
 
 この坂なら自転車で上れそうだ。

 そう思いながら、磁石を見たぼくはぎょっとなった。磁針は北をさしていた。
 うそだろ、ぼくとユーイチは顔を見あわせた。ライオン岬は太平洋にむかって、南に突き出しているのだ。

 これじゃあ、あべこべだ。南へむかうはずが、北に進んでいる。

 
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