恋するショコラ《完》
ただのプレーンのシリアルを皿に入れてミルクをたっぷり注いでやり、女の子の目の前に出した。
「ほら、食べな。」
真人が促すと、女の子はゆっくりした動作でスプーンを持った。
「…ぁ、あの、ぃ…い、ただきま、す。」
蚊の鳴くような声だったが、真人の耳に女の子の声が届いて、真人はふっと頬を緩めた。
女の子のは震える手でスプーンを握ってシリアルを掬った。真人は自分が見ていては食べづらいだろうと思い、ソファーに座ってテレビをつけた。
時折女の子にバレない程度にチラチラと様子を伺ってみたが、ゆっくりながら食べているらしい。
真人は女の子がきちんと食べていることに安堵し、同時に安堵した自分に驚いた。今までの真人はそんなことを心配した記憶など無かったからだ。