恋するショコラ《完》
「さ、食べような。」
テーブルに置かれた皿にはいくつかの一口サイズの美しいチョコレートが並べられていて、紅茶は湯気を立て、良い香りを漂わせている。
「はぅ。どれを食べたらいいでしょうか。どれも美味しそうで迷います。」
ほのかはうっとりとチョコを見つめている。
「どれでも好きなのを。美味しかったらまた持って帰ってくるから。」
色とりどりのチョコレートのなかからほのかは丸くしてつやつやしたチョコレートを手に取った。
「これは、何のチョコレートですか?」
「それは中にオレンジのジャムが入ってるんだ。」
「わぁ、オレンジ大好きです。…いただきます。」
ほのかはパクンとチョコレートを一粒口に入れた。その顔はうっとりしている。真人もチョコレートを一粒口に入れた。
「おいひぃ。」
ほのかはにこにこしながら真人を見た。とうやらチョコレートが気に入ったようだ。一粒食べたあと、紅茶を一口飲んだ。
「こんなに美味しいチョコレートと紅茶、初めてです!」
「ありがとう。」
真人は久しぶりにチョコレートを食べてもらう喜びを感じていた。真人はチョコレート作りの技術や新しいアイディアばかりに気をとられていたが、ほのかの嬉しそうな顔を見て初心を思い出していた。