恋するショコラ《完》
真人がチョコレートを作り始めたのは、真人の妹がきっかけだった。初めは真人が遊びで作っていたチョコレートを妹が美味しいと言ってくれたことだった。
真人はほのかの笑顔と初めて真人のチョコレートを食べた妹の笑顔を一瞬重ねていた。
「真人さんは、凄いです。」
ほのかが微笑み、呟いた。
「ん?一応、仕事だからな。」
「違う、んです。えと、なんていうか…。」
ほのかは何か言葉を選ぶようにうーんと小さく唸った。
「ひとを、幸せな気持ちに出来ることは、とても…素敵、だと思います。」
ほのかはにこりと笑って、真人を見た。真人は珍しく少し照れたように、その大きな左手で口元を覆ってほのかから目をそらした。
ほのかは目をそらされたことに不安になったのか、おどおどして俯いてしまった。
「ありがとう、な。」
ぼそりと真人が呟いて、ほのかはそろりと顔をあげた。少し顔を赤くしている真人は未だに目をそらしてはいるが、怒ったりしているわけではないとわかり、ほのかはほっと息を吐いて嬉しそうに笑った。