恋するショコラ《完》


ほのかは真人のそばから離れ、玄関へと向かった。


「バイバイ、ありがとう、真人さん。」


囁くような声で呟いてほのかは玄関に手を掛けた。そっとドアを開ける。ここへ来ることはもうないだろう。そう思ってほのかがドアをゆっくり開いた時だった。



ピピピピピピピピピピッ!!



けたたましい音がリビングに鳴り響いた。その音に驚いてほのかはパッとドアノブから手を離した。音で目をさました真人が寝室から玄関に飛んできた。


「ほのっ!ほのっ!大丈夫か!?」


真人はほのかをぎゅっと抱きしめて後ろに庇うと玄関の外を覗き見て、けたたましい音で鳴っている防犯ブザーのスイッチを切った。


「誰か、来たのか?ほの。」


ほのかはふるふると首を横にふる。
よく見るとまだ寒い季節にも関わらず、ほのかが着ているのは初めて会ったときに着ていた薄いワンピース一枚だった。昨日寝るときはいつもの部屋着をきていたはずだ。


「ほの、出ていこうと、したのか?」


真人は悲しそうな目をした。ほのかは居たたまれなくなって俯いた。


「とにかく、話は中で聞く。ほのはちゃんといつもの部屋着に着替えて、温かくして。」


真人は玄関のかぎを確認してほのかの手をとり、寝室へ引き戻した。



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