恋するショコラ《完》


ほのかは部屋着に着替えるとリビングのソファーに腰を掛けた。真人はさっきからキッチンにいるが、居たたまれなくなって落ち着かない。


ほのかがそわそわしていると、真人がトレーに二人分のマグカップとチョコレートが数個乗ったお皿を乗せてリビングに入ってきた。


真人がほのかの前にカップを置くと紅茶のいい香りが漂ってくる。


「まずは紅茶でも飲んで少し落ち着こう。俺もほのかも。それから朝ごはんはまだ作れないからチョコレートね。ほのか、チョコ好きだろ?」


ほのかはマグカップを手に持ってこくんと頷いた。


二人で無言のまま紅茶を飲む。温かい紅茶は少しずつふたりの緊張感をほくしてくれた。


「ほの、口開けて。あーん。」


真人はほのかの好きなオレンジピール入りのチョコを手にとってほのかの口元に運んだ。ほのかは少し躊躇ったがおずおずと小鳥の雛のように口を開いてチョコを口に入れた。


むぐむぐとチョコを食べる姿が可愛らしくて真人は頬が緩んだ。


「なぁ、ほの。ほののこと、話してくれないか?」


ふたりの間には沈黙が広がった。ほのかの眉はハの字に下がっている。


「ほのかが嫌だったら、ほのかの過去は聞かない。けど、今ほのかが思ってることや考えてることはちゃんと知りたいんだ。」


真人の真摯な言葉にほのかは固まった。真人が悲しそうな顔をするのは嫌だ。だけど、話したことで失望されたくない。軽蔑されたくない。…嫌われたくない。


ほのかは戸惑いを隠せない。




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