恋するショコラ《完》

「どうした、ほの?」


「ん、なんでも、ない。」


「続き、話すね。」


ほのかは真人に話す腹を決めた。真人なら受け入れてくれるだろうという気持ちでほのかは思い口を開いた。


「毎日お父さんに殴られたりしてたけど、真人さんの家に来る前、お父さんに…襲われそうに、なった、のっ、ぁ、う…ふ、」


ほのかは嗚咽を漏らした。真人が背中をさすってやり、落ち着かせる。
真人の家に来る前だから父親に襲われそうになったのはつい最近のことだ。記憶もまだ船名なんだろう。


「それまでは、我慢、ぅっ、ふ、してたけど、やっぱり…もう、無理だって、おもっ、っ!」


小さな体にどれだけの苦しみと悲しみを抱えて来たのだろうか。それも五年間もの長い間。


「それで、寒くて、だけど、途中からもう寒いのかどうかもわからなくって、真人さんの家の前で記憶がなくなって、気付いたらあったかくって、真人さんがいた。」


ほのかは真人がどう思っているか不安になって、恐る恐る真人を見上げた。するとほのかの目に映る真人はとても悲しそうな目をしていた。ほのかは真人に嫌われてしまったのかと不安に陥る。


「ほのっ、辛かったな。もう大丈夫だから。俺がほのを守る。」


ほのかの不安とは反対に真人はほのかをぎゅっと抱き締めてそう言った。その言葉を聞いてほのかの心の中の張りつめていた部分がぷつんと切れて、ほのかは堰を切ったように大声をあげて泣いた。


声をあげて泣くのはほのかが物心ついてからはじめてのことだった。


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