恋するショコラ《完》
「ほの、いっこ聞きたいことあるんだけど」
ほのかはきょとんと首を傾げた。
「ほのはさ、今は学校に行ったりとか仕事したりはしてないんだよね?」
ほのかの瞳が一気に不安の色を含んだ。それに気づいた真人は慌てて言葉を繋げる。
「いや、責めてるんじゃないんだ。純粋に聞きたいだけ。これから一緒に暮らしていくんだからちゃんと知っておきたいと思ってさ。」
そういって真人がほのかの頭をぽんぽんと撫でてやるとホッとしたようにほのかは肩の力を抜いた。
「学校には行ってないの。お仕事も。…お父さんが外に出させてくれなかったから。中学校は卒業扱いにしてもらえたんだけど、高校からは…。」
真人はがっくりと肩をおとしたほのかの隣に座ってほのかの肩を抱いた。
「そっか。」
「真人さん、わたしのこと嫌いになった?」
「ほののこと嫌いになる?それは絶対ないな。何でそう思うの?」
真人は幼子に話すように優しくほのかに尋ねた。
「わたし、何も持ってないの。人並みに勉強も出来ないし、世間知らずだし。」
真人はしゅんとしているほのかを見てくすっと笑った。
「ほのはほのだよ。確かに学校に行ってないし中学生から外に出てないから知らないことはたくさんあるかもしれないけど、それはこれからなんとでもできることだよ。ほのは純粋だし、とても優しい子だ。それは何よりも尊くてかけがえのないものなんだよ。そんなほのがすごく好きだよ。」
真人はほのかをぎゅっと抱き締めておでこに優しいキスを落とした。