幸せ



今日は、医者に外出許可を貰って、律と一緒に伊織の家に行くことに。
伊織の、いや、私の父親に会いに行くんだ。
やり残しって、なんか嫌じゃない?
だから、私は父親に会うことにした。
そしたら、律まで着いて来るし。
私一人でいいって言ったのに、付き纏ってくるから。


「そんな顔すんなよ」

「…私一人でいいって言った」

「心配じゃん。あのシスコン野郎は信じらんねぇし?」

「ま、正論だな」

「だろ?」


伊織だけじゃ、確かにヤバイかもしれないね。

家路を二人で歩いていると、不意に律が、手を繋いでくる。
しかも、指絡めさせる。
…久しぶりかもしれない。
律の手…。
暖かい…律の手。
太陽みたいに暖かい…。
律…。


「ん、どうした?気分悪い?」

「え、いや、違う!」


私何やってんの!?
いきなりまどろんで、律にピッタリくっついて。
肩に頭乗っけるなんて…。
私、変に思われた…かな?


「クス…真っ赤」

「う、うっさい!」

「可愛いなぁ〜。紫苑の真っ赤な顔」

「だ、黙れ、バカ律!!」

「紫苑、めっちゃ…可愛い…」

「なっ…!?おおおお、お前!!耳元で囁くな!!」

「耳まで、真っ赤になってるし!」

「うぅ〜…」


なんか、律がS…になってるぅぅぅ!
耳元で囁くなんて反則…私耳弱いのにっ。
しかも、道端でやるし…!
ひ、人が…人の目が…気になる…っ。
おまけに、耳を甘噛みしてきて。
私、思わず“ぎゃっ”って声上げちゃったじゃん…。


「マジ…可愛い…」

「は、離れろ!伊織ん家行くんだろ!」

「え〜…やだぁ…」

「律!」

「…コホン。人ん家の前でやんないでくれますかね」

「…ゲッ、シスコン野郎…」

「ナイス伊織!」


なんと、いちゃついてたら、(一方的に)伊織の家の前…。
迷惑そうに私達を見る、冷た〜い目。
伊織…ゴメン…。
< 108 / 206 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop