「ね、成瀬君の部屋、紫苑の写真ばっかだよ!」


確かに。
みんなで撮った写真ばっか。
机の上に飾ってあったり、壁にかけてたり。
死んだ人間の写真を飾るなんて。
止めてよ。

黙って見てると、律は私が写ってる写真に向かって、優しく“ただいま、紫苑”って言った。
…バカ…。
私はいないのに、なんでいつも言う台詞を言うの。
どんなときも、戻ってきたときは“ただいま、紫苑”って言う。
それを今もまだやってる。
ただの痛いヤツじゃないか…!
いつまで、私の還りを待ってるわけ…!
私は還らないんだよ?
私まで、悲しくなるじゃんよ…。


「バカ律…っ」

「紫苑…」

「意味わかんない…!あんたは幸せになればいいのにっ、何時までも私に縛られないでよ…律!!」


あんたは雅みたく、奥さん作って子供持って、家庭を作ればいいの!
私に縛られないでよ…。
縛られちゃ、ダメ…。
うずくまって泣いてると、楓はそっと抱きしめてきた。
耳元で私に囁く。
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