「俺に、家庭が出来るって、嘘だよな…?」

「ホント。だから、未練だけ捨ててって言ってんの、この分からず屋!」


俺の頬を強く引っ張る紫苑。
痛みが走った。
今ここに、紫苑が実体でいるんだって実感させられる。


「私、彼氏出来たんだ。新しい出会いがあったんだ。私はあっちで、新しい未来を築きたいんだ」


俺に言い聞かすように、話し出す紫苑。
彼氏とか信じられないけど、紫苑は幸せそうな顔をしている。


「…悲しそうな顔しないでよ。律は笑ってなきゃ…笑ってなきゃ、私まで悲しくなるじゃんよ…っ」


笑ってるつもりが、笑ってないみたいだ。紫苑は、次第に声が小さくなり、震え出す。
我慢してたのに!って、俺にキレて。
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