「…あ〜あ、タイムアップが来たみたい。ゴメンね律。もっと話したいのに」

「紫苑、消えんなよ!」


紫苑の頬に手をやった。


「…最後に、キス、しよ?」

「ああ…」


紫苑から誘いキスなんて、今日が初めてだ。
新鮮さを味わいながら、消えてく紫苑にキスをした。
紫苑が消えるまでずっと。


「律、律を忘れないからね…」

「紫苑!」

「律…!」

「紫苑!!」


遠ざかりながら消えてく紫苑に、手を伸ばした。
だけど、触れた手は宙に消えた。
俺は紫苑!!と大声で叫んで、泣き崩れた。
様子を見にきた兄貴が、俺に声をかけたが、そんなことどうでもよかった。
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