「紫苑さんのこと、考えてるんですか?」

「あ、ああ。暑がりは紫苑も同じだから」

「あたし、夏は1日中クーラーの下にいますよ」

「アイスも食べる?」

「もちろんです♪」

「紫苑と同じじゃん!きっと生きてたら、君と気が合うかもしれないな」

「優しそうな方ですもんね」


たまたま部屋に入れたとき、紫苑が写った写真を真弥は見た。
まだ元気だった頃の。
多分、高校の卒業式ぐらいの。
俺、天海、伊織、紫苑。
その写真を見て、真弥は微かに笑ったのを覚えてる。


『笑顔が素敵な方です、紫苑さんって』


ポロッと俺に言ってた。
絶望の淵に立って、生死をさ迷ってたあいつ。
自分から消えようとしたあいつ。
誰の前でも、喜怒哀楽を見せなかったあいつ。
無口で影の薄いあいつ。
そんな奴が、中学から変わり始め、高校時代には笑顔が見れた。
人一倍傷つきやすいのは、昔から変わらなかったけどな。
< 152 / 206 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop