「今日はありがとうございました!明日からもよろしくお願いします♪」

「お疲れ」


真弥を家に送り届けたあと、俺はふらりと紫苑がいた施設によった。
施設自体は開いていないが、院長の家なら開いてる。
こんな夜中に迷惑だろうけど。
そう思ったときには既に、インターホンを押していた。
出迎えたのは、院長の奥さんだった。
昔から変わらぬ笑顔で、あの人とオセロ勝負かしら?と言ってきた。
オセロ勝負、久しぶりにやってもいいですね。
俺はそう言うと、院長ん家に上がった。
書斎に行くと、院長は笑っていた。
来ると思ったとか言って。


「俺さ、結婚することになったんだ」

「そうか。よかったな」


オセロをやりながら、今までの報告をする。
この人は、俺や紫苑にとって父親同然の人。
だから、伝えなきゃって思ってた。


「反対するのかと思ったのに」

「しないさ。お前が決めたことだ。幸せになりなさい」

「紫苑も同じこと言ったんだ。幸せになれって」

「会えたんだな彼女に」


普通なら死人には会えないさ。
普通ならな。
だけど、俺は普通じゃないから。
だから、紫苑が見えたんだ。
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