私は体調が悪いと偽って、授業を抜け出してきた。
階段をゆっくり登り、屋上のドアを開けた。

―ガチャ…

勢いよく風が吹く。
ここに来た理由。
それは呼び出しを受けたからだった。



「呼び出した本人は、そこで何してるんだ」



律は、登校したままの姿。
ベンチでねっころがっていた。



「風邪でも引いたのかと思った」

「……」

「律?おい、律どうした?」



覗き込んだ瞬間。

―ガバッ

私は何が起きたかわからなかった。
とりあえず今の状況…。
律に抱き着かれてる…?
律の上に私が乗ってるの…この状態って?



「離せ…っ私重いから!」

「紫苑…」

「俺、お前を迷惑だとか、負担がかかるとか、全然思ってない。ただ純粋に、心配なだけなんだ」

「律、いきなり何言ってる」

「お前が思ってること、全部、俺に言って?俺、受け止めるから」

「律…」



天海といたことが、律を狂わせてるの?
それとも、院長が言ってた通り…本心なの?



「律が知って何になる」



私は、律に抱え込んで欲しくない。
だから、始めに酷いことを言うんだ。
諦めてっと、心で思いながら。
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