絶対、逃がさない!②(短編)
サッカー部を作るから、一緒にやろうと誘われたが、おれは断った。
ほかにやりたいことがあるんだ。
おれは走ることが好きだ。誰よりも、早く走るのは、最高に気持ちがいい。
だから、陸上部を作ろうと思っている。
女子陸上部はあるけど、そこに入れてもらうんじゃなくて、自分でちゃんと、男子陸上部を作りたいんだ。
何もないところから始めるって、楽しいと思うんだ。
伝統も何もなくて、真っ白な白紙状態からのスタートっていうのも悪くないと思うんだ。
「サッカーじゃなくて、ほかにやりたいことがあるって感じだね。
やっぱり、陸上?」
「なんでわかるんだよ」
見透かされたようにいわれて、おれは長岡の顔を見た。
整った顔に、穏やかな笑みを浮かべている。
「だって、海老原有名だったしね。
陸上、短距離の期待のエース。大会に出るたびに、次から次へと記録を塗り替えてたよね。
てっきり、陸上の名門の唱和学院にいくと思ったんだけどね」
・・・夏までは、そこに通うつもりだったんだけど、ね。