絶対、逃がさない!②(短編)
「・・・そういうおまえこそ、なんだよ。

 常に全国模試一番、中学期待の星、天才、長岡和也。おれたちの学校までものすごい頭のいいやつがいるって有名だったよ。

 おまえこそ、超進学校の、明翔高校に行くといわれてたじゃないか。

 ここがいくら、名門とはいえ、元女子高にわざわざこなくても」




 おれが言うと、長岡は少し、肩をすくめた。



「それは、海老原だってそうだろ? お互い様、いろいろと事情があるんだよ。

 おれの場合は、家庭の事情。

 ここってさ、男子の成績優秀者はかなり優遇されるだろう?

 それだよ。うちは、親離婚してるからね」



 さらりといわれて、おれはどう答えていいのか、迷った。

 男子成績トップは入学金、学費免除。それをずっと維持できれば、たしか大学入学後の援助もありだったような・・・。

 そうか、それでか。明翔高校は私立だけど、こんなものすごい特権はついてこないよな。

 ・・・そうか、まあ・・・いろいろと、大変だろうな。

 おれが、ぐるぐるといろいろと考えていたら、長岡がぷっと吹き出した。



「海老原、なに、真剣な顔してるわけ?

 べつにおれ、苦学生とかじゃないから、心配なく」


 

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