絶対、逃がさない!②(短編)
足には自信がある。
多少スタートダッシュが遅かったとはいえ、一番に学食に到着だ。
一年の校舎は学食からは一番遠いのだが、おれにはそんなの関係ない。
それに、必死になって学食に走るのは、今年から入学の男子生徒がほとんどだ。
女子はせいぜい、小走りで走るくらい。
ボリュームがあって、安価メニューは数量限定なのだ。必然的に男子で争奪戦になる。
今日も余裕で到着したおれは、学食のおばちゃんにすっかり好物になったカツカレーを頼む。
「おばちゃん、カツカレー、大盛りね」
「はいはい、大盛りね。いつも、断トツに速いね、海老原くんは。
おまけ、してあげようね。一番のご褒美だよ」
「ありがと」
ニコニコ笑いながらおばちゃんがカツをふた切れほど、おまけに乗せてくれた。
ご飯は皿からはみ出しそうなくらい大盛りで、カレーのルーはいまにもこぼれだしそうだ。
その上に、特大のカツと、おまけのふた切れ。
大盛りというより、特盛りだな。
ずしりと重いトレーをテーブルに運ぶ。